会津稽古堂で開催されている「会津漆器産業展~花開く消粉蒔絵」の会場へご案内します。 今回は会津漆器の歴史を辿りながらテーマに沿っての展示という初の試みです。 会津漆器は真綿で金粉等を蒔きつける消粉技法が特徴です。 一方、紛筒で金粉等を蒔く技法を、対比的に左端のモニターで紹介しています。
会津漆器は産業工芸ですので、時代の市場の変化にともなって発展してきました。 また漆器と漆のロウソクは双子の産物です。 当初は漆蝋の比重が高かったのですが、効率的な西日本のハゼ蝋に押されて漆蝋の産業的比重は下がっていきます。
「漆器産業工芸の始まり」では、蒲生氏郷による産業工芸としての誕生、その後の藩主により保護奨励されて育み育てられた会津漆器の紹介です。 また会津盛んなロクロによる木地挽は、東近江市の筒井神社との深い関係があります。
「技術の進歩」では、国内でも最も早くに発達した板物漆器の紹介です。 また会津漆器を産業工芸として一段と飛躍させた会津絵の膳と椀の展示です。 現在も作られている会津絵の菓子鉢も展示しています。
「消紛蒔絵とは」では、会津の根幹をなす消粉(金箔を細かくした金粉)を説明しています。 真綿で蒔きつけるという会津の最も得意とする蒔絵技法です。 早いタイミングで金粉を蒔きつけると綿ごみが付いたり発色が悪かったり、なかなか難しい技術です。
「品質の向上と効率化」 明治期の褒章条例による盃の受注のために、木版で盃の規格を定め統一化を図っています。 著しく木地挽の効率化が図られた鈴木式ロクロ(すり型によるロクロ挽)、塗に用いる手ロクロ、足踏みロクロなど、産業工芸として効率化が図られるとともに品質の向上に役立っています。
「花開く消紛蒔絵」 会津の蒔絵の柱をなす消粉蒔絵の紹介です。 真綿で蒔きつける消紛の蒔絵技法は、消金地、消粉色粉蒔絵、平極蒔絵へと高度に発達していきます。
「世界に羽ばたく」 会津漆器は明治期より活発に輸出されてきました。 特に戦後はアメリカ等に輸出され、日本の高度成長期の礎となりました。 木製の漆器のほか、陶胎漆器(素地が磁器)、金胎漆器(素地がアルマイトなど)など、現在はあまり見られない珍しいものが輸出されています。
「未来につなぐ」 会津漆器は、会津徒弟学校、会津工業高校、会津漆器後継者養成所、会津漆器技術後継者訓練校と、漆器業界と行政が力を合わせて後継者の育成に努めてきました。 会津漆器が現在も続くための大きな力となりました。
会場の都合で当初予定の展示面積の半分になってしまいました。 しかし、本展示会にあたって組合員の皆さんに声を掛けたところ、多くの漆器、資料等が集まりました。 初展示品が多いのも今回の特色です。 あらためて会津漆器産業を見直す機会となりました。
「A記」